2013年05月30日
旅するように里山を跳ぶ

↑ 『遊木の森』
練習コースは、出来るだけ、ロードとトレイルの比率を50%対50%にしてからというもの
すこぶる体調が良い。
腰やハムストリングスの痛み、坐骨神経痛に悩まされることが無くなってきた。
ロードが50%超えないようなルートを組み立てるため
時間を作っては、里山を跳びはね、トレイルを探している。
先日は、草薙の自宅から県大テニスコート脇のハイキングコースを日本平方面に進み
ゴルフ場に突き当たったところを右に行き、平澤観音へと出た。
(いつものトレイルコース)
平澤観音からは、アスファルトの車道にて平澤ライディングクラブ(乗馬場)を通り
『遊木の森』 http://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-080/mori/yukinomori/nakanihondaira.html
へと走る。
途中、前方から、ハイカーのおじ様が現れる。
ハイカーとしての出で立ちは、小ざっぱりとして清潔感に溢れ
そこはかとなく幸福感が漂う65歳くらいの紳士。
ハイカー紳士に道を尋ねると穏やかに丁寧に教えて下さり
「一人で行くの?」と少し驚かれ
リュックを下ろすと山地図を一枚下さる。
それを頼りに、これから先の道中を事故もなく進むことができた。
この地図が心強いお守りとなった。
『遊木の森』の中に駆け跳び遊ぶ私。
広大な公園に中年女がただ一人。(平日だからか、人っ子一人いなかった。)
子どもに返って気持ちよく、アップダウン、アップダウン。
満足した私は、公園の外れにある陸橋を渡り、日本平パークウエイを越えて山の中へと入って行く。
いよいよトレイルだ。
鬱蒼とした森の中をハイキングコースと思われるコースをしばらく進むと分岐点。
地図では、まっすぐ行くことになっていたが、興味津々で右に上がって行く。
そこには見晴らし台があり、おじさん(70歳代であろう)が2つの鳥かごを木にぶら下げて
何やら忙しそうに動いていた。
「こんにちは」と声をかけると驚いたそぶり。
籠の中には、メジロ。
しばらくお話しすると10年来の知人のように打ち解け合い
「実は、メジロ捕りに来たんだ。」と言う。
「オッチャンそれ違法じゃないか!?」と言うと
「今時は、みんな、テープの録音でオスを捕まえて帰っちまう。
だが、俺は違う。ちゃんとこうして、メス鳥を連れて来るんだから。」
とひとしきり、近代的密猟法に文句を言うと
「このメスを囮にして、今日は立派なオス鳥を捕まえられた。
あ、でも、このメスは俺のじゃないんだ。近所の人からの借りもんなんだけどな。」
(なんだよ、自前の鳥じゃ~ないんかよ。借りてまで来るんか~。)
と、少し呆れた。
「しかし、あんたも変人だな。女一人でこんな山の中。年はいくつだ?変な趣味やってんな~~~。」
とオッチャンも呆れていた。
「山は恐ろしいど~~~~。
あんたも有名人だろ・・・変な人って。俺も近所じゃ~有名人なんだがな・・・。」
という。
オッチャン、勝手に一緒にしないでくれ。
オッチャンは、そろそろ下山するというので
「オッチャン、密漁は内緒にしておいてあげるから、
この先の藪漕ぎを一緒に行かせてもらうよ。」
というと
「ホントに変なオバチャンだな~~~。」という。
足元の危ういオッチャンの後をゆっくりとついていく。
道中、藪こぎしながらオッチャンは、これまでの自分の人生を語りだした。
オッチャンの生い立ち、家族関係、近所の人との人間関係、死生観、子どもたちのこと、、、
いつの間にかオッチャンの話をカウンセラーのようにして聴いていた。
一気に話し、吐き出したオッチャンは、晴れ晴れたした顔で振り向き
「ほれ、ここに、俺のカブ(バイク)が置いてある。」
そこは、日本平パークウエイ脇の原っぱだった。
「俺は、カブで日本平パークウエイを走って帰るけど、あんた、一人で大丈夫か?
この先の崖で、こないだ投身自殺があり、カラスどもがウジャウジャいたって話だけど。
台風の影響で道が崩れて無くなっているらしいし、行けるかわからないから、万が一は、、戻ってこいよ。
それより、この先には行かないで、ここで手を挙げてヒッチハイクして車に乗せてもらって帰った方がいいんじゃないか?
それとも、俺のカブの尻に乗っていくか?」
と、とにかく心配してくれた。
「オッチャン、ありがとう。大丈夫だよ。行ってみる。
危険なら来た道を戻って来るからさ。」と、さようならを言って別れた。
メジロのオッチャンと別れてからは、ハイカー紳士にいただいた地図とにらめっこで進む進む。
しばらく行くと、メジロのオッチャンが話していた崖に出くわした。
そこで、右に登って行かなければいけなかったのだが、
右手にぶら下がっいたトラロープに気づかず、そのまま前進してしまい、
あと一歩踏み出していたら100メートルを真っ逆さまという、
崩れ落ちたハイキングコースの先端にいた。
火曜サスペンス劇場に出てくるような崖の上。
その崩落すれすれな場所をしばらく行くと、
後は、地図のままに進めばよかった。
アップダウンアップダウン。
崖沿いを行き
谷を行く。
静岡大学付近に来た。
気持ちの良いトレイルを一気に駆け下りると西敬寺だ。
しばらく、舗装路を走り
『小鹿の森公園』http://www.city.shizuoka.jp/deps/kouen-seibi/oshikanomori_p.htmlに到着。
展望台に向かう途中に、仲の良い老夫婦と出会い挨拶を交わす。
いつもお二人でハイキングを楽しんでいるという。
「ここから、また、山に入り平澤方面に向かいたい」
と話すと道を案内してくださった。
話しながら進むと
「僕は、竜爪山にも良くいくが、あなたみたいな女の人が山を跳んでいるよ。
その人は、リュックを背負ってタイツを履いて・・・・」
「今日は軽装ですが、それ、私かも?何となくお会いしたことがある様な気がします。」
そういうと、じ~っと顔を覗き込んできたご主人は
「あ、あれ?あなた・・・かも」って。
「しかし、一人でどこへでも跳んで行っちゃうんだね~~~。」
と、ここでも女一人の行動に驚かれる。
日本平パークウエイに行きついたところで
「迷ったら戻っておいで。」と言ってくださる優しいご夫妻とお別れする。
日本平パークウエイを横切り、反対側の山に入って行けそうな道を進むと
何やら、異様な雰囲気が漂って来た。
そこは、山を切り開いた建設現場のようなところであった。
藪の奥の方で「ギャ~ギャ~」という奇妙な声と何とも言えない生臭い異臭。
ここでも、火曜サスペンス劇場な雰囲気を感じ、恐ろしいことを想像する。
それでも怖いもの見たさに、その声と異臭のもとを確かめるべく前へと進んで行くと・・・
鉄作の檻の中で飛び回り、恐ろしい声を上げていたのは、何と・・・・何十羽ものカラス。
檻いっぱいに、たくさんの真っ黒なカラスがギュウギュウ詰めで飛び回り、柵にぶつかっては、悲鳴を上げていた。
異臭は、そこに放り込まれている肉塊からのものだった。
何とおぞましい、おっとろしい、見てはならない物を見てしまったのか。
きっと、どこぞの殺人鬼が遺体をこの檻の中に放り込み、カラスどもに処理させているに違いない。
秘密を知ってしまった今、私の命も危ない。
逃げるぞ!逃げるぞ!
と、楽しいはずの山のトレイルランニングは、
いつしか『火曜サスペンス劇場トレイルランニング』となってしまった。
とにかく、とにかく、走る。走る。
作業小屋があるところに出てきた。
あ~~~。
怖い。怖い。
見つかる。見つかる。
・・・・・・・・・。
しかし、待てよ・・・・。
こんな平和な静岡で火曜サスペンスがそうそうあるわけないじゃない。
ここは、一発、落ち着こう。
ここは、二発目、落ち着こう。
しばらく行くと、山のふもとの畑に出た。
人がいる。
畑の作業をしている。
真っ黒に日焼けしたおじさん。60歳代。
挨拶をし「ここはどこですか?」
と変な質問をすると
「平澤だよ。あんたどっから来た?この藪を来たのか?マダニのニュースを知らないのか?
危険だよ。女一人でぐるりと走って来たって?こら、驚いたな~。。。。」
ひとしきり、マダニとハチの講義をしてくださった。
そして、おっかなびっくり、山の上の柵の中のカラスについて尋ねてみた。
おじさん曰く、あれは、猟友会の方々が、カラス被害を減らすためにカラスを捕まえ
餌にイノシシの首やらを与えているらしい。
異臭は、イノシシだったのだ。
ここでも、おじさんと仲良くなり、
おじさんは別れ際に丹精込めて作った、
たくさんのジャガイモをくれた。
ジャガイモを背負って、
自宅までの6㎞を走った。
走った。走った。
ホッとした。
走った。走った。
顔がほころぶ。
走った。走った。
無事着いた。
4時間半にわたるトレイルの旅。
多くの人と出会って会話し
楽しかった。
嬉しかった。
気持ちよかった。
えへへへへ。
「旅するように里山を跳ぶmino」を見かけたら、どうぞ声をかけてくださいまし。