2009年03月20日
懐かし ハイカラな幸せ

子どもの頃、お隣に引っ越して来たお宅は、とてもハイカラだった。
ある日、子どものいないお隣さんが「遊びにいらっしゃいな。」と誘ってくれた。
うれしくて、うれしくて、興味津々お家に上がった。
お部屋の中は美しかった。
今思えば、子どものいない家では、こんなもんなのであったのだろうが。。。
「幸せそうだな~。幸せってのは、清潔で、良いにおいで、静かなものなんだな~・・・」
な~ンて勝手に思ってみた。
すると、急に緊張してきた。
外で泥だらけになって遊んでいるキチャナイ(汚い)子ども がお邪魔するには
似つかわしくないと思えたからだ。
お隣さんは、優しい声で『ホットケーキ食べる?』と聞いてきた。
『ホットケーキって何?』
というとしばらくして、二段重ねのまあるいケーキが出てきた。
それは、あまい香りととろけるバターと蜂蜜でできていて、そのお隣には
フォークとナイフが付き添っていた。
『うわ~ 昼間っから(?)、フォークとナイフだなんて、何と贅沢なんだろう!
大人になった気分だ!!』
とソファーからおしりが15cmくらい飛び上がったのを覚えている。
お隣さんは、優しく食べ方を教えてくれた。
「昔の人の苦労を思え!」というおやつの乾パンとはわけが違った。
私の“幸せ”の定義が増えた。
幸せとは・・・清潔で、甘いにおいで、静かで、やわらかくて、
優しい問いかけと大人な気分。
ついでに、レースのカーテンとクッションの効いたソファー。
(我が家にはないものだった。)
あまりにも幸せで夢のようなひと時だった。
『また、食べにいらっしゃい。』と言われ、帰るときには、額がつま先に付くほどおじぎして、
更にこう付け加えるのを忘れなかった。
『私には、双子の弟と妹がいます。
カーテンに触らせないし、ソファーで跳ねさせないので、今度一緒に連れて来てもいいですか?』
『もちろんよ。』
この幸せを弟と妹にも味合わせてあげたかった。
こうして、お隣さんに子どもができるまで、私たち兄弟は、“ハイカラな幸せ”を楽しませてもらった。